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評価:
ダイ・シージエ,ダイ・シージエ
¥ 3,925
(2003-11-07)
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これはいい映画でしたねえ。
ちょっと、「セブンイヤーズ・イン・チベット」という映画の
種類に似ているかもしれません。
セブン〜は、ブラピ扮する海外の登山家がチベットに長く過ごし、
そのことでダライ・ラマと交流。ダライ・ラマに世界を教える
お話でした。
この「小さな中国のお針子」も、都会で反社会主義的な行動の
罰として”再教育”のために、山岳の原始的?な小さな村に
派遣され4年を過ごすことになった青年マーとルオが、
西洋の文化や教育的知識を村人に植え付けていくことで、
彼らに世界を教える展開でした。
しかしながら、こちらの映画はほのぼのと、また懐かしい匂いの
する感覚の中で、どこか切なさも漂う映画でしたね。
マーとルオは、お針子という名前の少女に恋をします。
本名は明かされず、終始「お針子」という名前で呼ぶ感じが
なんだか粋だなあと思いました。
マーは文学青年でバイオリン奏者、ルオは歯医者の息子でした。
2人とも(先ほど書いたように)お針子に恋をするのですが、
彼女に対する行動は正反対でした。
ルオは積極的に彼女を色々なことに誘い、彼女に知識を植え付け
たいと、バルザックをはじめとする西洋の文学や知識、また字の
読み書きが出来ないお針子に、字の読み書きを教えます。
それとは対照的に、自らもお針子を好きなのに、ルオのように
は積極的に動かず、ただただ静かに彼女を陰で見守り、また
ルオの行動に嫉妬することもなく、ルオやお針子を支えます。
山岳の何も無い生活が映し出されるのですが、人々が何故か
幸せそうでした。
人間というのは、何かを持って初めて幸せになるのではないと
感じさせられました。
糞尿を肥やしにするために、背中に大きなバケツのようなものを
背負い、その中に糞尿を一杯に入れ運ぶシーンでは、都会育ちの
ルオたちには重いし臭いしで信じられない仕事なのですが、
それでもその地では糞尿は貴重な生活の糧であることも感じさせ
られます。
また、急な斜面を長く長く続く石段。
人々は毎日のように、また当たり前のようにそれを登っていき
ます。また日が昇り日が沈むまでを仕事の時間とする生活感覚
と時間管理。非常に原始的ですが、ほんの少し前の日本もそう
だったのだと思うと、何故か懐かしい感じがして幸せな気持ち
になるのです。
私の住む世界と比べ、随分と不便な世界なのに、何故か羨ましく
思ったりしました。
そんな日常の中で、ルオたちにちょっとした悲しい事件が起こり
ます。その事件は、お針子とルオの問題なのに、当のルオは知らず、
お針子はその苦痛と寂しさをマーによって支えられるのが、なんだか
皮肉ででも切ない場面でした。
ラストの、懐かしい村々が映し出されるシーンでは、まるで私自身
の故郷が映し出されたような、そんなセンチメンタルな気持ちに
なりました。
またお針子の結末・・・なんだかキューンとなりました。
お針子役の女優はとても良かったですね。
何が良かったかというと、初めて温泉で水浴びをしてルオたち
と出会うシーンでは、まだ無垢な少女のような笑顔を見せるので
すが、ルオたちと過ごすうちに、だんだんと大人の女の顔や
行動になっていくのですよ。
でも、最後のほうではまた不安を抱える、ただの山岳の村出身の
少女の顔、姿になっていました。
その辺の変化が不自然ではなく、より一層お針子という人物を
上手に演じていたような気がします。
この女優さん、日本の女優である「こだま愛」にそっくりでしたよ。
この映画、DVDを買ってもいいなあと思えましたね。
テレビで放送があれば是非観て欲しいし、一度レンタルでもご覧
になることをお勧めします。
中国は共産主義の嫌な国、のイメージがあるのですが、この映画
をみると彼らもまた私たちと同じ人間であり、幸せに素朴に生きて
いるんだなと感じさせられます。
(この映画は中国映画ではなく、フランスの映画なんですけどね)